Q センター試験で世界史Aをとろうかと迷っています。
  近現代史が得意で、中世史や古代史が苦手。
  それに世界史Aの方が単位も少ないし、教科書も薄いので、世界史Bよりも有利ではないかと思っているのですが。

A センター試験の世界史Aの問題は、難易では世界史Bの問題とほぼ同じです。例年大問の1つは世界史Bと共通問題で、その他の問題も難易では、世界史Bと大差ありません。問題を易しくすると、世界史Bで学習してきた受験生が、センター試験で高得点を狙うために世界史Aを選択する現象が起きるので、問題の難易を世界史Bにあわせることで、あらかじめそうした現象を回避しているのだと思われます。

ただし、世界史Bと世界史Aの難易が同じというのは、学校の先生や私やセンタ−試験の問題出題者のような、世界史の「プロ」にとってであって、一般的な受験生にとっては、むしろ世界史Aの方が難しいでしょう。

理由の1
 近現代史の分野では、受験生の苦手な社会経済史で、世界史Bでも出題されないような問題が出題される。また、同じく受験生が苦手とする第二次世界大戦後の戦後史も多く出題される。

理由の2
 近現代史以前の分野では、受験生の苦手な同時代史的な世界史理解が求められる。

理由の1の説明
 一般的に世界史Aの教科書の方が世界史Bの教科書よりも、現在の大学での研究成果をより大胆に採用し、特に社会経済史関係では「新しい」内容が盛り込まれていて、センター試験にもそれが反映しています。
近現代史の問題にその傾向が強く、世界史Bの教科書で勉強してきた受験生には解答困難な内容理解の正誤問題が出題されることもあります。
 また、世界史Aの教科書の特徴として、第二次世界大戦後の戦後史については、むしろ世界史Bよりも詳細であることがあります。従って、センター試験でも、戦後史の問題については世界史Bよりも難度が高い問題が出題されることがあります。

理由の2の説明
 世界史Aの教科書では、1/3を占める近現代以前の内容を、同時代史、ないしは地域間の交流史という「ヨコ」の視点で整理していきます。従って当然ながら、センター試験の問題のテーマも、同時代史的なものになります。その上で、センター試験では、事項自体の難易は、世界史Aの教科書ではなく、世界史Bの教科書にあわせてあります。
つまり、世界史Bと同じ難易の事項を、受験生が苦手とする世界史A的(同時代的)テーマで出題するのが、センター試験の世界史Aであると考えてください。

*世界史Aを選択した場合の問題点
 世界史Aは、教科書では、産業革命とアメリカ独立革命以後の近現代史が2/3の比重を占めているので、近現代史が得意な受験生は世界史Aの方が有利なのではと考え勝ちなのですが、そうとは言い切れません。
 実際に、古代から近世がセンター試験でどれくらい出題されるかは、年度によって違います。2003年度の本試験では、40問中、4問しか出題されませんでした(一方で、第二次世界大戦後史が10問!)が、2002年度ではなんと41問中21問が古代から近世の出題でした。2002年は40問中10問、2001年は40問中18問なので、隔年現象があります。
 隔年現象通りだと、今年度は古代から近世の出題が多い年にあたります。
 そこで、今年度は、教科書の比重通りにおよそ1/3が古代から近世であるとしましょう。
 32点分くらい。
 さて、近現代史が得意という理由で、センター試験で世界史Aを選択することをあらかじめ決定してしまうと、どうしても古代から近世の学習に力が入らなくなります。それを加味した上で、「理由の2」の事情を勘案して、予想得点を半分(かなり甘い)の16点としましょう。残り68点分が近現代史ですが、「理由の1」のような場合があるので、世界史Bなら近現代史が8割(54点)とれる受験生も、世界史Aの場合は、やや得点が落ちると予想しておいた方がいいでしょう。7割5分として51点。
 そうすると期待できる得点の上限は、67点(この試算はむちゃくちゃ甘いと私は思ってますが)ですね。 
 センター世界史Bの近現代史で8割とれる実力がある人なら、この得点は、ちょっとつらい。

 多分、素直に世界史Bを受けた場合の方が、得点は高いでしょう。
 
 世界史Aをとった方が世界史Bをとった場合より有利なケースとしては、2003年度のように、古代から近世が1割しか出題されず、なおかつ近現代史だけなら、戦後史も含めて世界史Bで9割以上取れる実力がある場合ぐらいしか考えられません。
 古代〜近世が昨年同様1割の比率であることにかけて世界史Aを選択し、一昨年のように5割が古代〜近世であった場合は、かなり悲惨なことになります。
 
 実際のセンター試験の平均点を見てみましょう。
 
 今年が河合塾の数値でBが57点、Aが41点。昨年はBが60点で、Aが43点です。

 センター試験が4択問題であり、知識ゼロで本来0点の受験生でも、平均25点はとれるはずということを考えると、この平均点の低さには恐るべきものがあります。
 世界史Aは、本来理系から文系にかわったり、職業高校で世界史Aしか設置されていない学校の受験生が受験層の中心なので、平均点が低くなるのだという説明がされてきました。
 しかし、私は、世界史Aの受験生には、本来世界史Bなのに、世界史Aの方が有利になると考えて世界史Aを選択した受験生が、相当数含まれているとにらんでいます。
 その結果がこの平均点だとすると、世界史B回避の受験生のほとんどが、世界史Aで轟沈してしまっているという事態が想像されます。

 もちろん、何ごとにも例外はあります。

 が、結論としては、世界史Aより、世界史Bをとった方が、いいんじゃないかな。