2007年第1回 2006年高円寺エンターティメント研究所大賞

◎2006年高円寺エンターティメント研究所大賞
  TVドラマ「のだめカンタービレ」第10話

 マンガ『』の欠点は絵が下手なことと、肝心な音楽が聞こえてこないこと。特に後者は致命的であって、音声をも二次元的に表現しなくてはならないマンガ表現の特殊性を考慮にいれたとしても、あるいは読者の(つまりは、わたしの)音楽知識の有無を差し引いたとしても、音楽を描くことの困難さを露呈してしまっていた。
 TV版「」は実際に音楽を聴かせることで、その困難をうやむやにしてしまった。TVドラマで、これほど音楽が流れたことは今までなかっただろう。ただクラシックを流せば良いというわけではないが、その点、この脚本はそれなりに練られていたと思う。フジテレビはよく頑張った。原作の世界を目いっぱい 構築してみせた。ジャニーズの力を借りようとして、からNGが出たTBSとはやる気が違っていた。
 は、今後の彼女の女優生命が心配になるくらい「野田恵」以外の何者でもなく、「」は見事に「ハリセン」だった。をギャグ要員にしなかったことも好感が持てた。
 ただ、原作に忠実であろうとするために、無駄なギャグやエピソードを入れてしまい、ドタバタとした非常に落ち着きのない展開になってしまったことや、「二番目に有名な大河内」くんの定型ギャグはまだしも、Sオケの端役たちが毎回のように顔を出していたため散漫な印象の場面があったことが残念だった。
 第10話は、のだめのコンクールが中心で、これまで千秋の相手役のようだった「のだめ」がやっと主役としての見せ場満載で、ドラマ最大の盛り上がりをみせている。

次点 映画「
 何が素晴らしいって、のエンディング曲。
 も、「」の痛手から確実に立ち直っていて、安心した。
 L役のは得したね。

◎2006年高円寺エンターティメント研究所所長賞
  日本チーム

 世界的にマイナーなスポーツであっても、その運営方法が開催者側の都合で変則なものであったとしても、参加メンバーが必ずしもベストとはいえなかったとしても、世界チャンピオンであることにかわりはない。
 アメリカや日本では最も人気の高いスポーツであり、変則ルールで日本が得をしていたわけではなく、日本のメンバーもベストというわけではなかった。
これは素直によくやったと褒め称えたい。

◎2006年新人賞
  『』瀧波ユカリ(講談社)

 古色蒼然としたほのぼの4コマや最近はやっているという萌え4コマばかり読んでいると、脳のしわが無くなってしまうので、時にはガツンと刺激を与えないといけない。
 残念なのは、毎月の掲載ページが少ないので、滅多に単行本が出そうにないこと。

2006年ワースト
  『(新潮社)

 英国貴族へのコンプレックス丸出しの駄文集。両親の100億分の1の才能も無い。
 「武士道」というものは、「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉と一緒で、そうあって欲しいという願望の表現であって、かつてそうであったという 事実の記録ではない。そもそも、全人口の1割程度にすぎない特殊階級について書かれた書物でもって日本という国家を語ろうとする発想自体、著者の権力志向 を表していて、とても品が悪い。
こんなに頭が悪くても学者になれてしまうという見本。まっとうな数学者は困っているだろう。
                                          <了>