ラシーヌ(1639-1699)
コルネイユと並び称されるルイ14世時代を代表する悲劇作家。幼くして孤児となり、パスカルが所属したこと、イエズス会に対抗する運動を繰り広げていたことで有名な、ポール=ロワイヤル僧院で教育を受ける。ー時は文学に心酔して僧院を攻撃したものの悔い改め、キリス卜教信仰に基礎を置いた傑作を次々に発表。代表作『フョードル』は「完壁な美しさでキリス卜教的な霊にもとづいたもの」と評されている。実人生でも敬虔なキリス卜教徒として生き、死んだが、彼をとりまく環境は、かなり俗悪なものであった。この時代のフランスでは有力者のサロンが競いあって卑劣な陰謀や悪意ある批評が繰り返され、コルネイユも彼もそれに悩まされ世評高い『フョードル』すら、初演は競争相手の陰謀と妨害により失敗に終わっているのである。