ソフォクレス(前496-前406)
ギリシア三大悲劇詩人の一人で、ペリクレス、とともにぺリクレス時代を代表する人物。市民としても、幾度か将軍に選ばれ、ぺロポネソス戦争にも将軍として活躍。代表作は『オイディプス王』。テーベの王、オイディプスはテーべを襲った疫病(ここにはペロポネソス戦争初期アテネを襲った疫病の恐怖が反映している)の原因が先王を殺した下手人の汚れにあることを知り、探索を進めるうちに自分こそがその下手人であり、しかも自分が父を殺し、母と結婚するであろうと予言されていた宿命の子で、先王が自分の実の父、そして自分が結婚した女が実の母であることを知る。ために彼は自らの両目をくりぬいて、荒野をさまようことになる…この悲劇は一人の才能に満ち溢れた正しい人物が、善意と正義にもとづいて行動しながら、なお神(運命)からおそるべきしうちをうける様を描いて、ギリシア悲劇、ギリシア運命劇の最高傑作とされる。なおここから、心理学で父に反感を持つ一方で母の愛を得ようとする男児の心理をエディプス=コンプレックスと呼ぶようになった。ちなみに、心理学の用語にはこの手の文学関係のものが多くて、サドはフランス革命期、「美徳の不幸、悪徳の栄え」「ジュスティーヌ」などの作品を残したマルキ=ド=サドの名から。マゾは世紀末の歴史学者にして「毛皮を着たヴィーナス」の著者ザッヘル=マゾッホから。ロリータ=コンプレックスは、ロシア革命による亡命貴族にしてアメリカの大学教授ナボコフの著作「ロリータ」からとられている。いずれの著作も入試には出ないが、文学史上の傑作である。
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