出題年:01年
出題校:一橋大学
問題
17世紀から18世紀におけるヨーロッパは絶対主義あるいは絶対王政の時代と呼ばれる。とりわけルイ14世が統治したフランスは典型的な絶対主義国家とされているが,このような政治体制がどの程度「絶対的」であったのかに注意しながら,その特徴を述べなさい。(400字以内)
採点基準例
国王は唯一の立法者
その権威は神から授けられたものとする王権神授説で正当化
議会を開催せず
封建諸侯の不輸不入権や都市の自治権を制限
全国的な官僚制度
軍隊は,国王直属の常備軍
封建諸侯は国王の廷臣,常備軍将校
重商主義政策→国内産業の育成と海外植民地の獲得を目指す。
国内統一市場実現を望む新興市民層も当初は支持
全国的な徴税制度,個人を臣民として支配しようと努力
身分制度や従来の社会集団は解体されず
その支配は,中世以来の社会集団に対する支配にとどまる
農民は農村共同体,都市住民は都市のギルドなどに対する帰属意識が強い
国民としての意識は希薄
解答例
国王は議会を開催せず唯一の立法者として振るまい,その権力は神から授けられた絶対なものであるとする王権神授説でこれを正当化した。中世以来の封建領主の不輸不入権や都市の自治権を制限し,自立的であった様々な社会集団を国家の統制下に置き,全国的な官僚制度を整え,国王直属の常備軍も整備した。そのため,貴族階級も宮廷の廷臣や常備軍将校として国家に寄生する存在となった。官僚制度と常備軍維持のための貨幣の必要から,国内産業の育成と海外植民地の獲得を目指す重商主義政策を行い,新興の市民層も国内統一市場の成立を望んで当初はこの体制を支持した。また全国的な徴税制度を整え,個人を臣民として直接国家の掌握下に置くことに努めたが,実際には従来の身分制度や社会集団が解体されず、貴族の直接税免除特権や農民に対する領主権、あるいは都市におけるギルド特権なども維持されたため困難であり、その絶対性には限界があった。(394字)
*絶対王政の限界とは何かが問題となる。を参照。