シューマン(1810-1856)
ドイツのロマン派音楽家。代表作「子供の情景」哲学博士号を持ち、文学の才にも恵まれ、音楽批評家としてもロマン派の運動を推進。メンデルスゾーン、ショパン、ブラームスの音楽の価値を広く紹介したことでも知られる。が、彼の作曲家・音楽批評家としての出発はピアニス卜としての挫折に始まっている。「シューマンが指の強化装置に熱中した余り、それで筋肉を痛めピアノを断念し作曲家になったのは有名な話である。シューマンは右手の中指を壁に固定した紐でしばり、他の四本の指が弾いているあいだその中指がつられて動くことがないようにした。これを熱心に続けているうち、その縛った中指がマヒして動かなくなってしまった。それだけでなく、やがてマヒは右手全体に及んで、全く使いものにならなくなってしまったのである」一中村紘子「ピアニス卜という蛮族がいる」にもかかわらず、その後多くのピアノ曲を作曲するとともに近代的ピアノ技術を開拓した。しかしその障害に加えて、繊細な神経ゆえの精神病に悩まされ、1854年、急速に悪化した病のため、友人の集まっていた部屋を抜け出し、ライン川に身投げする。この時は救出されたものの、以後精神病院に療養生活を送り、それもむなしく1856年に46歳で死んだ。