ラブレー(1494-1553)

したいようにせよ(欲するところを行え)」という言葉で有名な、フランスルネサンスの前期を代表する作家・人文主義者。彼の大作『ガルガンチュア物語』の主人公、巨人ガルガンチュアは、作者の意思を体現し、社会的因習を軽々と踏み越えていく。まあ、それにしても創造力のスケールがけた外れな小説で、例えばガルガンチュアの誕生については生まれたのは母親の左の耳、うぶ声は「のみたーい、のみたーい」で、その声がフランス中に響きわたり、赤ん坊を養うために17913頭の乳牛が必要であった…という調子。福音主義の理想に立ちながらも、新旧両派のどちらにも属さない態度を示し、巨人ガルガンチュアとその子パンタグリュエルによって狭量な新旧両派の対立そのものを風刺した彼の作品は、カトリックからも、カルヴァン派からも異端とされ、発刊後たちまち発禁処分となり、自身も流浪の亡命生括の果てに死んだ。