出題年:1993年
出題校:東京大学
問題文
現在,世界は冷戦の終わりを迎えている。第二次世界大戦後,長期にわたって世界史の流れに影響を与えた冷戦は,世界の各地域で異なった現れ方をした。冷戦下の深刻な問題の一つが分裂国家の出現であったが,これまでにヴェトナムとドイツの二つの分裂国家が統合されている。この二つの分裂国家の形成から統合への過程を,冷戦の展開と関連づけて略述せよ。解答は,下に示した語句を一度は用いて,20行(600字)以内で記せ。また,使用した語句には下線を付せ。
ゴルバチョフ  ジュネーヴ会議  封じ込め政策  平和共存  ベルリンの壁


解答例
第二次大戦後英米仏ソ四ヶ国の占領下にあったドイツは,封じ込め政策とコミンフォルム結成で東西冷戦が激化し,西側の通貨改革断行に対してソ連がベルリン封鎖を行ったことで東西の分裂が確定した。1950年代後半には雪解けが進展し,平和共存が唱えられたが,ドイツ問題は解決せず,1961年にはベルリンの壁が構築された。1970年代になるとデタントの動きの中で西ドイツ首相ブラントが東方外交を行い,1972年に東西ドイツ基本条約を締結して翌年の国連同時加盟を実現した。1980年代後半になるとゴルバチョフの新思考外交で冷戦が終結に向かい,1989年にはベルリンの壁が破壊され,翌年ドイツは統合された。第二次大戦後共産主義勢力を中心に北部にヴェトナム民主共和国が成立したヴェトナムでは,フランスとの間でインドシナ戦争が発生し,その過程で南部にヴェトナム国が建国されて南北分断が確定した。フランスは1954年にジュネーブ会議の休戦協定を受けて撤退したが,共産主義への巻き返しをはかるアメリカが介入し南部にヴェトナム共和国が建国された。それに対し北ヴェトナムが支援する南ヴェトナム解放民族戦線が結成され内戦が激化すると,アメリカは1965年に北爆を行ってヴェトナム戦争を開始した。しかしアメリカはデタントの一環として1973年にはパリ協定でヴェトナムから撤退した。そのため優位に立った北が南を統合する形で,1976年にヴェトナム社会主義共和国が成立した。