新役員のごあいさつ
編集長 中村富由彦
俺が編集長の中村だ。
クラブでは真面目な人間で通っているが、なんてことはない、極度の分裂症だ。普段はびくびくうさぎを気取っているが、大善へ行けば柏原よしえの真似もやる。だがここで俺は、自己紹介をぶつ気はない。少し書いたのは気分だ。
俺は編集長で、マンスリーを作るのが仕事だ。しかし一人でマンスリーは作れない。
だからしつこく原稿を依頼している。会員である以上、原稿を書くのは義務だ。書くのが苦手とか、暇がないとか、そんなこと知るもんか。俺には関係ない。
次に俺は編集長だが、執行部の一員をも兼ねている。組長の、いや会長の近藤ボスや小山のあねごをサポートしながら渉外の中渡瀬とつるんでクラブの円滑な運営を図るのが、言ってみれば役目だ。だが執行部は執行部であって同じ会員であることに変わりはない。他の全ての会員と同等なわけだ。そこがヤクザの世界とは違う所だ。文句を言ってもリンチを加えることは、俺達にはできない。むしろ文句を期待している所が執行部だ。
今年の一年には浪人してハクのついた野郎どもがいくらもいると聞く。俺もそいつらに負けないように、今年一年推理研というシャバで大いに揉まれようと思っている。
もう一度繰り返す。俺が編集長の中村だ。原稿を自分から進んで書こうが書くまいが、それはカラスの勝手だ。だがたかが二、三枚の紙切れでも、それによって会員一人一人のクラブに対する姿勢が、ある程度は問われるということを、よく知っておいてもらいたい。俺の言いたいのは、それだけだ。
終わり