ホッブス(1588-1679)
17Cイギリスの哲学者・政治学者。哲学者としては唯物論哲学を唱えたが、自然法と社会契約説の考えから、初めて市民社会の理念(現代社会の原則)を明らかにし、にもかかわらず絶対王政を擁護した政治学者として特に重要である。彼の説は、主著『リヴァイアサン』に展開されているが、人間は自由・平等であり、生存の権利を有する〈自然権〉ことを認めることから出発する。しかし自然権を個々人が無限に追及すれば必ず個々人の利害の衝突を呼び、「人間は人間にとって狼である」から「万人の万人に対する闘争」が始まってしまう。だから人間は契約を結び<社会契約>自然権を放棄して社会・政府・国家(この場合は絶対王政)に預けたのであり、社会・政府・国家は絶対的な権利を持つとするのである。彼が提示した個人と社会、個人と国家の関係をいかに結ぶかという問題は、現代の我々につきつけられた問題でもある。