出題年:2005年
出題校:一橋大学
問題文
第二次世界大戦後に「冷たい戦争(冷戦)」という米ソ両体制の対立する時代が形成された背景には,大国による核開発,核保有が大きな役割を果たしている。第二次世界大戦後の冷戦勃発から,1989年のベルリンの壁の崩壊に至るまでの時期を対象に,各国の核保有,各国間の核軍縮の経緯を押さえた上で,この冷戦期の国際政治に核兵器が果たした歴史的役割について述べなさい。その際,下記の語句を必ず使用し,その語句に下線を引きなさい。(400字以内)
キューバ危機 中距離核兵器全廃条約
封じ込め政策 ワルシャワ条約機構
解答例
核兵器の単独保有を背景としたアメリカの封じ込め政策で冷戦が始まった。しかしソ連も核兵器の開発に成功して対抗し,事態は核兵器を軸としたNATOとワルシャワ条約機構の二大軍事機構の対峙に至った。ソ連はICBMの開発に先行し,心理的優位を背景に平和共存外交に転じたが,キューバのミサイル基地建設をめぐってキューバ危機が勃発した。この核戦争の危機を回避した米ソ両国は部分的核実験停止条約を締結して核管理体制を構築しようとしたが,独自の核開発を進める中仏はこれに反対し,国際政治は多極化の情勢となった。70年代前半は米ソ両国が核兵器制限条約に調印してデタントを演出したが,80年代前半はアメリカがSDI計画で軍拡に転じ,米ソ対立が激化した。軍拡で経済が悪化したソ連は80年代後半に新思考外交で核軍縮を呼びかけ,同様に財政が悪化したアメリカもこれに応じて中距離核兵器全廃条約が調印されると,冷戦は終結に向かった。