出題年:2005年
出題校:一橋大学
問題文

中世後期のヨーロッパ大陸諸国において,君主によって設けられ,招集される議会が生まれた。フランスの三部会,ドイツの等族議会が良く知られているが,その他にスペインのコルテス,ポーランドのセイムなどがあり,諸身分や団体の代表が出席した。これらは「身分制議会」と呼ばれるが,その歴史的な経緯と主な機能,そしてその政治的役割について,特に近代の議会との違いに留意しながら具体的に述べなさい。(400字以内)


解答例

身分制議会は,中世的な諸団体を代表し,身分秩序維持の役割も果たした点で,諸団体を解体して等質な国民を直接代表する機関となった近代の議会と相違する。身分制議会は,教皇との対立を背景に成立したフランスの三部会に代表されるように,王権が台頭していく過程で各地の自立的な団体を統合する機関として成立した。議会を通じて王権は地域や職能団体への課税を可能とし,議会は王権の全国的展開の拠点となったが,やがて諸団体は議会の課税協賛権を武器に王権に対抗し,既得権益の保持を主張するようになった。そのため,さらなる王権の強化が行われたフランスやスペインでは議会は弾圧され,フランスの三部会はルイ13世時代に停止され,スペインのコルテスはイサベラとフェリペの両王によって機能が制限された。一方,王権が弱体化したドイツの帝国議会やポーランドのセイムは,自立した地方権力による連邦制的な緩やかな統合と利害調整の場となった。