ヴェルレーヌ(1844-1896)
「巷に雨の降るごとく/わが心にも涙ふる…」と詩ったフランス象徴主義の代表的詩人。オランウータンと自噺した醜貌の持ち主であったが、詩名もあがり、美しい妻を得、パリ市役所という安定した勤め先も得て、さてこれから平凡であるが幸福な生活を築いていこうとしたまさにその時、彼が「わが悪霊」と呼んだ大天才美少年詩人ランボーが眼の前に出現。運命を狂わせていく。ランボーに魅せられた彼は仕事も妻も全てを捨て、ランボーと共にイギリスやベルギーを放浪する旅に出てしまい、その旅の果てに自分から離れようとするランボーを銃で狙撃し、監獄に二年間放りこまれてしまうのである。その間にランボーには去られ、妻からも離婚を宣言され、出所後は新たな愛人の美少年レチノアとともに農場経営を試みてうまくいかず、魔酒アブサンに蝕まれ、詩人としての評価が高まっていくのと反比例するように詩想も枯れてろくな詩もつくれなくなり、各地の施療院を転々とし、最後は同棲していた老売春婦の部屋で死んだ。これほどの転落の生涯もちょっと珍しい。