出題年:2001年
出題校:一橋大学
問題文
10世紀後半から11世紀にかけて,地中海世界は大きな歴史の転換期を迎えていた。キリスト教世界は拡大し,ローマ皇帝位をめぐる政治交渉も見られた。「ヨーロッパ世界の形成」という観点から当時の事情について述べ,その政治的・宗教的背景について説明しなさい。その際,下記の語句を必ず使用し,その語句に下線を引きなさい。(400字以内)
ビザンツ帝国 オットー1世 ウラジミール1世 ファーティマ朝
解答例
マジャール人の侵入を退けた東フランク王オットー1世は、ローマ教皇から帝冠を受け皇帝権を復興し、ビザンツ帝国からも皇帝位の承認を得て、分裂傾向にあった西欧世界に求心力を回復した。しかし教会組織を国家統治に利用する帝国教会政策を推進したことは、後にローマ教会との間で叙任権闘争を引き起こす原因になった。一方首位権をめぐる東西教会の対立が先鋭化する中で、皇帝が教権を支配するビザンツ帝国では、ブルガリアを初めとしたスラヴ世界に布教が行われ、キエフ公国のウラジミール1世もギリシア正教に改宗し、ギリシア正教圏がロシアにも拡大した。地中海でも、ファーティマ朝成立によるイスラム世界の混乱に乗じてキリスト教勢力が進出し、シチリア島などを奪回するとともに、コンスタンティノープルやヴェネツィアが商業利権を確保していった。こうして二つのキリスト教が対立し、地中海貿易の利権を争う東西ヨーロッパ世界が形成された。(397字)