エウリピデス(前485-前406)
三大悲劇詩人の最後の一人。「人間は万物の尺度」と説いたソフィス卜、プロタゴラスの影響を受け、やと同じく神話や伝説を基にしながら、人間の心理を重視した作風を確立。特に女性の心理描写 に優れる。代表作『メディア』は、ギリシア神話の金の羊毛探険隊で、隊長イアソンを助けて羊毛を手に入れさせ、その妻となる魔女メディアのコリン卜での悲劇に題材を得たもの。探険後メディアと共にコリントに赴いたイアソンはそこで国王クレオンの娘を新しく妻にしようとする。メディアは、魔法の衣装で花嫁と国王を殺し、さらに自分とイアソンの子を殺して去っていく。それまでは恐ろしい魔女の行為と考えられていた物語は、作者によって夫に見捨てられた妻の心理劇として同情を込めて描かれる。夫に捨てられた妻の悲哀と愛情回復へのむなしい努力。やがてそれが夫への憎しみに転じ、メディアはついに夫に苦痛をあたえる目的で、狂おしい心のうちにわが子を殺し、夫の新妻とその父を魔法の衣によって焼き殺すにいたるのである。一方でギリシア神話の英雄イアソンは金と権力に目がくらみ、恥を忘れた卑劣漢として描かれる。彼の作品は同時代ではそのあまりの革新性の故に評価されること少なく、喜劇詩人のの嘲笑を浴びたりしたが、後世その作品は3大悲劇詩人中最も愛好された。
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